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類型的日常風景1

類型的日常風景


学生会室から地鳴りのような大絶叫が響いたのは、もうすぐ夏休みに入ろうとしている日の放課後の事だった。
相変わらず、デスクワークを嫌って逃亡していた丹羽を何とか捕獲する事に成功させた中嶋が、丹羽を引き摺るように連れ帰ってから、ほんの数分後の出来事だった。
連日の猛暑日で、学生達もぐったりとしている者が多い中、それなりに防音効果のある筈の壁をものともせず、学園中に響き渡ったその大音量に、誰もが思わず歩みを止める。
「突然大声を出すな!」
珍しく、こちらも大きな声を張り上げて、学生会副会長の中嶋が、悲鳴を上げた張本人である丹羽会長の頭を思い切り書類の束でひっぱたく。
しかし、いつもならば中嶋の暴挙に黙っているような丹羽ではなかったが、何故か今日に限っては、顔面蒼白のまま押し黙っていた。
「お、王様・・?」
その視線の先にいるのは、学生会の手伝いに足繁く通う伊藤啓太で―――瞬きすらしないまま凝視されて、啓太は困惑したようにオロオロと視線を漂わせる。
「・・・ど、どうしたんですか・・・?」
恐る恐る声を掛けた啓太に向かって、丹羽は震える指先を向けた。
「・・・そ、それ・・・」
「え?」
丹羽の指先が指し示す方を視線で辿った啓太は、自分用にと与えられていた机の上に広げていたノートへと辿り着く。
「これがどうし―――・・・」
ノートを持ち上げようとして、啓太は、はっとして動きを止めた。
これって・・・そういえば―――。
「―――そのノートがどうした。」
丹羽だけではなく、啓太までもが固まったまま動かなくなってしまったのを見て、中嶋は呆れたようにため息をつく。
「―――啓太。」
一向に反応の無い丹羽は放っておいて―――中嶋は、凄味のある視線を啓太に向けた。
「は、はい・・・え、っと・・・」
「そのノートはどうした?お前が買ったのか?」
歯切れの悪い啓太に、中嶋は矢継ぎ早に質問を投げ掛ける。
「い、いえ・・・俺、は―――」
視線を漂わせたままの啓太に、中嶋はギロリと睨み付けた。
「昨日は、持っていなかったな。」
その言葉に観念したように、啓太はそっとノートを手に取ると、丹羽に背を向ける格好でノートの表紙を中嶋に見せる。
「―――これは?」
中嶋が小さく咽喉の奥で笑いを噛み殺したのが、確かに見てとれた。
「西園寺さんに頂いたんです・・・」
俯き加減で申し訳無さそうに呟く啓太に、中嶋は面白い玩具を見付けたかのように、益々楽しそうな表情を浮かべる。
「学生会の仕事は、覚える事が多過ぎて大変だって話しをしたら・・・ノートにメモしておけば、忘れないって―――・・・」
西園寺さんが此れを―――と、語尾は殆ど消え入りそうな勢いで、自分の肩越しに、頻りと丹羽の様子を伺う。
啓太が手にしているノートには、愛くるしい子猫が微睡んでいる顔の表情がアップで載っていたのだ。
猫嫌いの丹羽に見せたりしたら、どうなるか―――天性のカリスマ性で、学園の王の座に座る丹羽の面目は丸潰れになってしまう。
「面白い。」
しかし、中嶋は、ふん、と鼻先で笑いながら腕を組むと、見下すような視線を啓太に向けた。
「なかなか良い友を持ったな、啓太。」
まだ笑いを引っ込めない中嶋は、丹羽に見付からないようにと表紙を隠すように胸に抱え込んでいる啓太から、ノートを引き抜く。
「あっ・・・中嶋さんっ・・・」
嫌な予感を感じて、慌ててノートを取り戻そうと手を伸ばしたが、勿論腕力で中嶋に勝てる筈もない。
「痛っ・・・」
軽く頭を小突かれて、かわされてしまった。
「おい、テツ―――啓太はお前と違って勉強熱心だな。」
そう言いながら、いまだに呆然と立ち尽くす丹羽の元へと歩み寄る。
「・・・え」
暫く放置していたせいか、幾分意識が戻ってきていたようで、中嶋の声に僅かに反応を示して、丹羽が視線を向けた。
「ほら、見ろ。注意を受けた所を書き出してある。」
中嶋の声と一緒に、啓太のノートが丹羽の目の前に差し出される。
「―――――っ?!」
勿論、表紙を丹羽に見せるように差し出してある事は、言うまでもない。
言葉にならない悲鳴を上げながら、丹羽の大きな身体が文字通り、飛び上がる。
「どうした、てっちゃん。顔色が悪いようだな。」
素知らぬ顔で、中嶋は更に一歩丹羽に近付く。
「お前も少しは見習ったらどうだ。」
「わかった!わかったから!」
情けなく涙声になりながらも、丹羽は目一杯両手を前に突き出して、中嶋の進行を阻止しようと躍起になる。
「何だって?よく聞こえないな。」
更に一歩、足を進めた中嶋に、丹羽は情けない声を上げた。
「わかったっ!俺が悪かった!これからは真面目にやる!ちゃんとやるから!」
助けてくれ、と言わんばかりの丹羽の様子に、さすがに可哀想に思ったのか、啓太が間に入って、仲裁に乗り出すまで―――中嶋の辛辣な毒舌は続き、丹羽の哀れな叫び声は止まる事は無かった。


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