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素敵なお正月の迎え方~学園島編~

素敵なお正月の迎え方~学園島編~


「あれ?啓太か?」
今年も残す所あと数時間となった12月31日の大晦日―――学生寮の廊下で、啓太は丹羽に呼び止められた。
「何だよ、実家に帰らなかったのか?」
不思議そうな丹羽の様子に、啓太は少しだけ困ったような笑みを浮かべながら、首を横に振る。
「戻ってましたよ。さっき帰って来たんです。」
学園島へと渡る交通手段が、跳ね橋を通過するバスのみと限られている以上、バスの運行時間に合わせて行動しなければならない。
啓太が乗って来たバスが、此の日最後の―――つまりは年内最後のバスとなるので、夕方には学園島に着いてしまっていたのだ。
「―――正月は、家族で過ごすのかと思ってたぜ。」
ニヤリ、と―――丹羽は、何処かしら意味深な笑みを浮かべながら、少し瞳を細める。
そんな丹羽の態度に、怪訝そうに小首を傾げながらも、啓太は曖昧に小さく微笑んだ。
「少し早いですけど、実家でのんびりして来ましたよ?」
新しい年は、大好きな人の傍で迎えたい―――そんな風に考え出したら、居ても立ってもいられなくて、啓太は気が付いたら学園島に渡るバスに飛び乗っていた。
家族には、適当に理由を付けてきた―――学生会の仕事を手伝っている事は伝えていたし、勉強や課題が日々大変な事も伝えてあったので、理由には事欠かない。
正月ぐらいは家族で過ごしたかったのに―――少し寂しそうに呟く母親や妹に、正直申し訳無いとは思ったが、バスの時刻ギリギリまで家族との大切な時間を楽しんできたつもりだ。
「それより―――・・・王様は?」
此れ以上、話しが長引くと余計な事まで口走ってしまいそうで、啓太は丹羽に話しを振る。
一瞬、片方の眉を微かに上げて啓太を見詰めたものの―――丹羽は、素直に啓太の話しに乗ってくれた。
「此れから帰るぜ。」
片手を自分の胸元まで持ってくると、丹羽はバイクのエンジンを掛けるような仕種をしながら、にか、と楽しそうに笑う。
「さっきまで、ヒデに扱き使われててさぁ。バスに乗り遅れると面倒だから、バイクで帰るって決めておいて良かったぜ。」
大袈裟に溜め息をつきながら、丹羽は大袈裟に肩を竦めて見せた。
「ヒデの奴―――・・・まだ学生会室に残ってんのかなぁ。ほんと、仕事の鬼だな、あいつは。」
啓太から視線を逸らしながら、わざとらしく呟く丹羽に、一瞬瞳を見開いたものの、啓太は、そうですね、と小さく苦笑いを浮かべながら呟く。
「じゃあな、啓太っ!」
自分に気合を入れ直すかのように、拳を握った両手を軽く振って、丹羽は啓太に背を向けた。
啓太が此の後、学生会室に向かう事は、聞かなくても判る。
実家に帰る―――のでは無く、戻っていたと表現した啓太は、恐らく無意識の内に口にしたのだろうが、中嶋が残っている此の学園には、帰って来たと嬉しそうに告げていた。
「はい!良いお年を、王様っ!」
背中に啓太の弾んだような声を聞きながら、丹羽は振り向く事無く、片手を上げる。
「啓太もなっ!」
啓太と出逢う前の中嶋は、長期の休みくらい、仕事とお前の顔は見たくない、と辛辣な言葉を残して、早々に学生寮を出てしまっていた。
其れが今年に限って―――勿論、日々の業務を疎かにし、仕事を溜め込んでしまっていた丹羽の責任もあるのだが、大晦日である今日までの間、扱き使われる羽目になるとは思ってもみなかった。
中嶋も待っていたのかもしれない―――啓太が戻って来るのを。
お互い示し合わせていたとは思えない。
中嶋の性格からして、そんな事はしないだろう―――という事は、言葉に出さなくても通じ合っていたという事だ。
其れだけ、繋がっているという事なのだ。
「あ―――あ・・・少しは期待持っても良いかなぁって思っていたんだけどな。」
外に出た丹羽は、がりがりと頭をかきながら、抜けるような青空を仰ぎ見る。
丹羽にとって相棒と呼んでも良い位の存在である友が得た、掛け替えの無い宝物である啓太の笑顔を思い浮かべながら―――丹羽は大きく伸びをする。
頬を刺す冷たい空気が、少しだけ丹羽の涙腺を刺激していた。






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