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焦れったい恋心と甘い拘束1

焦れったい恋心と甘い拘束


「ねぇ、此処に行ってみない?」
そう言ってパンフレットらしきものをテーブルの上にひらりと置いたのは、金糸の髪を柔らかそうに靡かせたテニス部主将の成瀬だった。
「あ、成瀬さん、おはようございます。」
寮の食堂で朝食にトーストとハムエッグを食べていた啓太は、にこやかに挨拶をする。
「―――プールですか・・・?」
其の隣で、啓太のクラスメイトで親友の遠藤が、幾分不機嫌そうに眉を顰めた。
「おはよ、ハニー。この秋に新しくオープンするリゾート施設だよ。」
露骨に邪険な視線を向ける遠藤の存在を綺麗に無視をすると、成瀬はテーブルの上に置いたパンフレットを持ち上げて、啓太の前に差し出す。
「俺、知ってます!今、CMやってますよね?屋内と屋外に、大きなプールがあるって宣伝していました。」
啓太は、こく、と一口牛乳を飲んでから、パンフレットを受け取った。
「あれ、でも―――確か、9月にオープンってCMしてませんでしたか?」
パンフレットをぱらぱらと捲りながら、啓太は怪訝そうに眉を顰める。
「ん、そうだね―――・・・でもね、ほら・・・見て?」
小首を傾げる啓太に、成瀬は得意げな様子で、ポケットから何やら取り出した。
「プレオープンの招待券を貰ったんだ。」
成瀬の手の中には、金色の縁取りがされた派手なチケットがあり―――特別無料招待券と書かれていた。
「へぇ―――・・・凄いですね。」
其れは、正式なグランドオープンを前に関係者だけを集めて行われるプレオープンへの招待券だった。
「うんっ・・・此の間、テニスの試合の時に、主催者の人に貰ったんだ。」
素直に感嘆の溜め息を漏らす啓太に、成瀬は嬉しそうに瞳を細めた。
「どう?行ってみない?プレオープンは、夏休み中だし、屋外のプールもきっと楽しめるよ。」
身を乗り出すようにして、啓太の顔を覗き込んでくる成瀬に、隣で黙々とご飯を口に運んでいた遠藤が、身体を寄せるようにして啓太にくっついて来た。
ぴく、と成瀬の肩が不自然に揺れる。
「面白そうじゃん、啓太。俺も行ってみたいな?」
甘えたように肩を摺り寄せながら、遠藤が啓太の顔を下から覗き込んで来た。
「―――――っ・・・」
其の言葉に、成瀬は無言のまま思い切り眉を顰め、そんな成瀬を上目使いでちらりと見遣った遠藤もまた、無言のまま片方の口角を上げて笑みを刻む。
「残念だけど、お友達くん。」
声の無い笑みに、むっとしたように一瞬、瞳を眇めたものの、直ぐに成瀬は勝ち誇ったような余裕の仕種でもって前髪をかき上げた。
「生憎と此の招待券は、1枚につき2名ま―――・・・」
「勿体振らんと、出せばええやろ。」
にこやかな成瀬の言葉を遮ったのは、軽快な関西訛りの高い声色だった。
「俊介っ!」
成瀬が慌てたように身体を捻ったよりも早く―――背後にいた滝は、成瀬のズボンの後ろポケットから何やら引き抜くと、テーブルの上に放り投げる。
「何や、全部で5枚もあるんかいな。ほな、オレも行けるな。」
啓太の目の前に散らばったのは、先程成瀬が啓太に見せた特別招待券と同じチケットだった。
全部で4枚あり―――成瀬が手にしているものと合わせれば、5枚になる。
「―――――」
むっとしたように黙り込んでしまった成瀬に対し、遠藤は瞳を眇めるようにして、ほくそ笑む。
「先程、一枚につき2名まで大丈夫だと仰っていませんでしたか?」
「だったら、決まりやな。」
遠藤の其の言葉に、滝は悪戯っぽく笑ってみせた。
大袈裟に溜め息をついてみせて―――成瀬は、がっくりと肩を落とす。
「―――折角、ハニーとプールデートが出来ると思ったのに・・・」
「抜け駆けは良く無いですよ、成瀬くん。」
ぼそ、と呟いた成瀬の背後から静かな声が聞こえてきたのと殆ど同時に、ぴりぴりと肌を刺すような威圧的な冷気まで漂って来て、成瀬は振り向く事無く溜め息をついた。
「―――七条、まさか君まで行きたいとか言い出すんじゃないだろうね?」
言いながら、ゆっくりと視線を向けると―――其の先では、朝食が乗っているトレイを近くのテーブルに置いた会計部補佐の七条が、先程の冷気を発していた人物と同一だとは到底思えない程の穏やかな笑顔を浮かべていた。
七条の背後にいた、会計部部長の西園寺は、柔らかそうな長髪をゆるりと片手で払いながら無言で椅子に座ると、先程七条が置いたトレイを引き寄せて、上に乗っているヨーグルトを口に運ぶ。
「おや?いけませんか?」
ふふ、と何時もの穏やかな笑いを含ませながら、七条は人差し指を自分の唇へと持って行く。
考え事や―――悪巧みを思案している時の七条の癖だ。
ふ、と其の切れ長の瞳が細められる。
「君ねぇ―――・・・インドア派のくせに―――・・・」
「良いですねぇ、皆で行った方が、きっと楽しいですよっ。」
深々と溜め息をついた成瀬の語尾を、うきうきとした様子で瞳を輝かせている啓太の弾んだ声が被さってきた。
「―――――っ・・・」
思わず言葉を飲み込む成瀬に、少しだけ同情の瞳を向けた七条は、小さく笑みを零す。
「―――だそうですよ?」
どうしますか?というように、様子を伺ってくる七条に、成瀬は思わず天井を仰ぎ見た。
「ね、成瀬さん?どうせなら、皆で行きましょうっ。」
ダメ押しのように、全開の笑顔で振り向いた啓太に―――成瀬は、頷くしかなかった。
もう勝手にしてくれ―――そんな声が聞こえてきそうな様子の成瀬は、肩を竦めるようにして、其の場の空いている椅子に腰掛けると、長い脚を組んで溜め息をつく。
「そんな訳で、郁―――・・・?」
七条と一緒に此の食堂に来たにも関わらず、話しに全く興味が無いのか、七条が運んで来た朝食を黙々と食べていた西園寺は、不意に七条に声を掛けられて、露骨に嫌そうな視線を向けて来た。
「勿論、行きますよね?」
「何故、そうなる。」
見事に、二人の声が重なって―――西園寺は溜め息混じりに頬杖を付くと、ぎろり、と七条を一瞥した。
「何故って―――・・・嫌いでは無いでしょう?なのに、行かないんですか?」
折角、伊藤くんが誘ってくれたのに―――と悲しそうに瞳を伏せる七条に対し、西園寺は、またか、というように、眉を顰めて緩く首を振る。
七条の場合、芝居がかった感情的な其の仕種の殆どが、見た目通りの気持ちを表しているとは限らないというのが、西園寺の持論であった。
「最近は、どっかのバカが書類を溜め込むから、毎日忙しなくて敵わん。たまにはのんびりさせろ。」
大きく溜め息をつきながら、肩を竦めて見せる西園寺に、啓太は気付かれ無いように小さく苦笑を漏らす。
あえて名前を告げなくても判る―――露骨に西園寺が嫌悪感を露にするのは、学生会の王である、丹羽に対してだけだ。
「そうですか?残念ですねぇ―――・・・此処、スパもあるそうですよ。エステもあるって書いてあります。」
テーブルの上に出しっぱなしになっていたパンフレットを手に取った七条は、ちらり、と西園寺の方へ悪戯っぽい視線を向けてから、実に楽しそうに内容を読み上げた。
「アロマテラピーやストーンマッサージなど、世界各国のエステを体感する事が出来ます。癒しの空間へようこそ―――だそうです。リフレクソロジーとタイ古式マッサージもありますね。」
其の内容を聞いて―――西園寺の肩が、ぴく、と微妙に揺れる。
思案するように、手にしたパンフレットを目線の高さまで持ち上げて、一旦唇を引き結ぶと、七条は西園寺へと視線を流した。
「面白そうですね、郁?」
笑いを含んだ声色は、明らかに西園寺の反応を楽しんでいるようで―――相変わらず無言で朝食を食べてはいるものの、美の女神すら嫉妬しそうな程の美貌を僅かに拗ねたように歪めているのが見て取れた。
「やっぱり、行きませんか―――・・・」
ふぅ、と大きく溜め息をつきながら、七条は、やれやれ―――というように、肩を竦める。
「―――誰が行かないと言った。」
むっとしたように思い切り眉を顰めながら、西園寺は視線を向ける事無くきっぱりと断言した。
「―――行きたいのなら、初めからそう言えば良いんですよ、郁。」
苦笑混じりにそう言うと、七条は、此れで6人決定ですね、とにっこり微笑む。
実に楽しそうな其の笑顔に、成瀬は、判ったよ―――と、無言のまま肩を竦めて見せた。
「おっ?なんや、なんや?!プールサイドにあるレストランは、プレオープン中、食い放題、飲み放題やて!」
特別招待券を繁々と見詰めていた滝が、急に大きな声を上げてチケットを掲げた。
「なに!?其れは、何が何でも行かなくちゃな!」
何時の間に来たのか―――滝の背後には、学生会会長の丹羽の姿があり、滝の手元にあるチケットを覗き込んだかと思ったら、思案するように腕組をしながら、うんうん、と頷いている。
「な?ヒデ、お前も来いよ。」
後ろを振り返り、朝食のトレイを持った中嶋に声を掛けるものの、丹羽は返事も待たずに、滝からチケットを掠め取ると、空いている椅子にどか、と腰を下ろした。
「なになに?・・・おっ、良いねぇ!バーもあるってよ!オリジナルカクテルに、各種お酒も飲み放題!」
顎に指先を添えながら、楽しそうに含み笑いをした丹羽の頭上で、不意に、ごつん、と、鈍い音が響く。
「いっ・・・ってぇ―――?!」
丹羽が後ろを振り向くと、其処には寮母のようだと噂されている学生寮の寮長である、篠宮が渋い顔をして立っていた。
其の手には、夜、各部屋を回る点呼の時に何時も持ち歩いているファイルがあり―――どうやら、其のファイルの角で丹羽の頭を直撃させたらしい。
「学生の分際で、酒の話しをするとは何事だ。」
自分の頭を直撃した物を目の当たりにして更に痛みが増したのか、丹羽は自分の頭を何度か撫でる。
「―――聞いているのか、丹羽!」
きり、と篠宮の目尻がつり上がり、丹羽は、げっ、と思わず口走ってしまってから、慌てたように両手を振る。
「いやいや、冗談だって!本気で酒なんか飲む訳ねぇだろ?!」
ははは、と渇いた笑い声を上げる丹羽を、啓太を含め―――其処に居合わせた殆どの者が、冗談じゃないだろう、と心の中で突っ込んでいた。
知らぬは、寮長のみ―――何かと口実を作っては寮内で秘密裏に行われる宴会では、必ずと言って良い程にお酒が出て来るのだ。
其の殆どが―――丹羽と中嶋の胃袋に収まっていた。
もしかしたら、篠宮は薄々感付いているのかもしれない―――そういった方面には、恐ろしく勘の働く所がある。
しかし、悪巧みに関しては丹羽が―――況してや、裏工作に至っては中嶋がミスをする訳も無く、今まで篠宮に尻尾を押さえられた事は無い。
動かぬ証拠が無い限り、篠宮の性格上、強く言う事は出来ないのだろう。
無言のまま丹羽を見詰める周囲の視線が―――何処と無く意味有り気だと気付いたのか、篠宮は両手を腰に当てながら、丹羽を鋭い視線で見下ろす。
「俺も同行しよう。」
「なにっ?!」
きっぱりと断言してきた篠宮に、裏返った声で反発したのは丹羽で―――其のあまりにも素直に響いた声色に、周囲は一斉に渋い顔をした。
「BL学園の学生ともあろう者が、外で問題でも起こされたら困るからな。」
両手を腰に当てた篠宮が、鋭い視線で其の場に居る全員をゆっくりと見渡す。
「―――何か問題でもあるのか。」
そして、最後に丹羽の所で視線を止めると、瞳を眇めるようにして丹羽を睨み付けた。
探るような其の視線に、丹羽は慌ててぶんぶんと首を横に振る。
「よし。其れなら―――・・・」
反論して来ないと判断したのか、篠宮は大きく頷くと、ぐるり、と視線を食堂へと向けた。
「卓人!おい、卓人!」
そして、食堂の隅の方で一人、何やら飲んでいた岩井の姿を見付けると、片手を上げながら行ってしまった。
「―――あの様子だと、岩井さんもお誘いするみたいですね。」
岩井の元で手振り身振りを交えながら話しをしている様子を遠目に見詰めながら、七条は、ふふ、と小さく笑う。
「―――――・・・」
溜め息で其れに答えながら、成瀬は頬杖をついて窓の外を見上げた。
空は、抜けるような青空で、雲ひとつ無く、灼熱を思わせる太陽の光りが窓硝子に反射して、キラキラと光り輝いていた。
日に日に最高気温は高くなり、きっとプレオープン中は、絶好のプール日和だろう。
「楽しみですね。」
ぼんやりと窓の外を眺めていた成瀬の横に立った啓太は、同じように窓の方へと顔を向けながら、独り言のように呟く。
「―――――」
視線を戻した成瀬より少し遅れて振り向くと―――啓太は、にこ、と人懐っこい笑みを浮かべた。
「―――そうだね。」
困ったような苦笑を浮かべながら、其れでも成瀬は、隣に立つ可愛い後輩を見上げて微笑んだ。

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